ロックウェル硬さ試験「トレーニングガイド」

 

硬さ試験機を初めて扱う人は、職場でのスーパーバイザーより、「基礎トレーニング」をOJTにて受けていますが、本書により、更に上達を目指す一助になればと思います。

ロックウェル硬さ試験機の測定機構には、底面基準によるものと、表面基準によるものの2つのタイプがあります。

前者は、基準荷重試験の位置決めに試料の裏面を使用し、後者は、試料の表面を使用します。両者の根本的な違いは、表面基準硬さ試験機が、振動、試験片下の異物、酷使環境下での測定に対応した機構になっている点です。

しかし、新しいオペレータがトレーニングを受ける時は、環境に対してより敏感な底面基準タイプの試験機について正しい用法を学ぶ事が大切です。

こうしたテクニックを十分に学習すれば、どんな硬さ試験機を使っても正確な結果を問題なく得られると考えます。以下に述べる「ドゥー」「ドント」は、表面基準硬さ試験機には、一部当てはまらない事もありますが、底面基準試験機には全て適用となります。

 作業を始める前に、試験機がスムースに作動するかどうかを点検して下さい。

アンビルとアンビル座の接触面、及び圧子の受け面が汚れていれば、きれいに清掃して下さい。

圧子やアンビルの取り外し、取付けを行ったり、基準片を取り替えたりした後の、1点目の測定値は無視して下さい。

試験機が使用硬さ範囲内で、正確である事を確認する為に、各使用硬さ範囲で、基準片1個につき35点の測定を行って下さい。平均値がASTME18の確認チャート範囲内に収まる筈です。

   (ASTME18 Table21 硬さ基準片に対する許容差表)

硬さ基準片の呼び硬さ

硬さ基準片に対する許容度

硬さ基準片の呼び硬さ

硬さ基準片に対する許容度

CスケールA   60以上

         60未満 

±0.5

±1.0

BスケールB  45以上

    1.5以上45未満

±1.0

±1.5

Aスケール  80以上

    60.5以上80未満  

±0.5

±1.0

Fスケール

   57以上99.6未満

 

±1.0

15Nスケール 90以上

   69.4以上90未満

±0.7

±1.0

15Tスケール 75.3以上

    60.5以上75.3未満

±1.0

±1.5

30Nスケール 77.5以上

  41.5以上77.5未満

±0.7

±1.0

30Tスケール 46.2以上

     15以上46.2未満

±1.0

±1.5

45Nスケール 66.5以上

19.6以上66.5未満

±0.7

±1.0

45Tスケール 17.6以上

       1以上17.6未満

±1.0

±1.5

 A その他のスケールで、鋼製硬さ基準片を使用する場合は以下の値による。

    HRC 6070相当:±0.5    HRC 2059.9相当:±1.0

 B その他のスケールで、黄銅製硬さ基準片を使用する場合は以下の値による。

    HRB 1.0100相当:±1.0

 

 

 先端がつぶれたボール圧子や、欠けたダイヤモンド圧子による測定値は、高くなる傾向にあります。

ダイヤモンド圧子の先端は、宝石職人用の安い10倍アイループ等を用いて容易くチェックできます。ボール圧子の状態に疑問あれば、ボール圧子を取り替えて下さい。

アンビルや圧子の交換は、圧子をぶつけないように、圧子の先端に指を当てて行って下さい。この習慣を身に付けておけば、高価なダイヤモンド圧子を、より長く使う事が出来ます。

 

 基準荷重を掛ける時は、昇降ネジをスムースに、一方向に回していき、基準荷重の位置を過ぎたら、もう一度、新しい測定箇所を選んでやり直します。

アナログタイプの試験機の測定精度は、ゼロ設定をいかに上手く行うかに左右されますので、ゼロ設定を正確に行います。

 

 除荷動作がモータ駆動でない試験機の場合、荷重レバーが静止してから除荷します。

薄鋼板のような高フロー材料で練習する場合には、試験荷重の保持時間をコントロールする事が大切です。この種の材料では、荷重保持時間を長くかけるほど、測定値は低くなります。試験荷重の保持時間は、最大23秒とします。

 

 手動タイプの試験機で除荷を行う時は、スムースかつ均一に行います。強くレバーを引っ張ったり、余分な力を加えてはいけません。乱暴に操作しますと、測定値が0.51.0光度位は、容易に変動します。

アナログタイプの試験機の場合、ダイヤモンド圧子を使用するスケールでは、黒い数字を読み、ボール圧子を使用するスケールでは、赤い数字を読みます。また、スーパーフィシャルスケールのボール及びダイヤモンド圧子では、緑色の同じ数字を使用する事もあります。

 基準荷重、試験荷重及び圧子が、試験対象のスケール通、正しく選択されているかどうか常にダブルチェックします。ASTM E18からとった以下の表が役立つでしょう。

 

 

 

 

スケール記号

圧子

試験荷重sf

ダイヤル上の数字

典型的な適用例

B

1/16-in.(1.588mm)硬球

100

銅合金、軟鋼、アルミ二ウム合金、可鍛鋳鉄等

C

ダイヤモンド

150

鉄鋼、硬鋳鉄、パーライト系可鍛鋳鉄、チタン、深い肌焼き鋼、HRB100以上その他材料

A

ダイヤモンド

60

超硬合金、薄鉄板、浅い肌焼き鋼

D

ダイヤモンド

100

薄鋼板、中程度の肌焼き鋼、ベークライト系可鍛鋳鉄

E

1/8-in.(3.175mm)硬球

100

鋳鉄、アルミ二ウム並びにマグネシウム合金、軸受合金

F

1/16-in.(1.588mm)硬球

60

銅合金の焼きなまし材、軟質金属の薄板

G

1/16-in.(1.588mm)硬球

150

可鍛鋳鉄、鋼、ニッケル、亜鉛合金並びに白銅、硬球のつぶれ防ぐ為HRG92まで

H

1/8-in.(3.175mm)硬球

60

アルミ二ウム、亜鉛、鉛

K

1/8-in.(3.175mm)硬球

150

軸受合金及びその他の軟質極薄材料、アンビルの影響受けない範囲で最小の硬球と最大の荷重を選択する。

L

1/4-in.(6.350mm)硬球

60

M

1/4-in.(6.350mm)硬球

100

P

1/4-in.(6.350mm)硬球

150

R

1/2-in.(12.70mm)硬球

60

S

1/2-in.(12.70mm)硬球

100

V

1/2-in.(12.70mm)硬球

150

 

 試験片の表面仕上げは、125rmsより良好で、裏面の仕上げは平滑かつ清浄でなければいけません。

バリ、汚れ、錆、その他の異物が試験結果に悪影響を与えるので、注意をして下さい。試料下の異物の非弾性的な変形0.001インチ毎に、試験結果は約10硬度程の悪影響を受けます。

例え、髪の毛1本でも試料の下にあれば、結果は810硬度も狂ってしまいます。

 振動のない場所で、試験を行い、必要なら防震パッド・防震台の上に試験機を設置します。

 

 測定箇所は、他の窪みから、少なくとも窪みの直径の2.5倍は離れるように選択します。

窪み同士の距離が近すぎると、読取誤差を生じるので、十分な間隔をとるようにします。

 窪みは試料の縁から直径の2.53倍以上離すようにします。これより近づけると、測定精度に悪影響を与えます。

 

 円筒形材料の表面を試験する時は、ASTM E18の補正表を参照する事。試験機メーカー提供のチャートを利用しても良いと思います。

薄い材料を試験するときは、ASTM E18の最小厚さの表を参照する事。ロックウェル硬さについては、0.004インチよりも薄い材料、またロックウェルスーパーフィシャル硬さについては、0.003インチよりも薄い試料には、これらの表を使います。

 

 硬さ換算表はおおよその数字に過ぎないので、実際の試料について詳細な比較がなされていない限り、換算表を頭から信用するのは避けた方が良いと考えます。

異なる材料ごとに、別々の換算表があるので、ASTME 140を参照することをお薦めします。

 

 常に試験面と圧子のなす角度は、直角である事。この角度が数度以上狂った状態で測定しては正確な計測はおぼつか無くなります。

負荷が掛かっている時には、試料を動かしてはいけません。試料をしっかりと保持するには、正しい固定と、クランプ絞めが必要となります。

 

据え置き型のロックウェル硬さ試験機には、様々な異なるモデルがあるので、正しく試験機を操作するには、メーカーの使用説明書をよく読むことが必要です。

これらの試験機は全てASTME 18に適合しているので、これまで述べてきました操作手順を遵守して、硬さ試験を行えば、一貫して正確な測定を行う事が出来ます。

 

 

 

      “Basic Training for Rockwell Hardness Testing”  in Heat Treating.May (1990)

                                                                 Gordon M.Baker