
製造現場では、「なぜか今日は良品が続かない」「ベテランなら異変に気づくのに、判断が遅れてしまう」といった課題が少なくありません。
こうした現場の違和感や経験則を数値データとして扱い、異常の兆候や品質に影響する条件を見える化する。それが、品質工学の考え方をベースにしたソフトウェア、SignalCatcher(シグナルキャッチャー)です。
SignalCatcherには、大きく2つの役割があります。1つは、いつもの状態から外れた変化を見つける「MT法」。もう1つは、加工・製造条件から結果を推定する「T法」です。最新のver4.0では、特にT法まわりの機能が追加・強化され、条件検討や予測をより扱いやすくなっています。
1. 「異常」を捉える。MT法による多次元診断
従来の上限・下限による管理では、個々の数値が正常範囲内に収まっていても、複数のデータのバランスが崩れている状態、いわゆる複合的な予兆を見逃すことがあります。
MT法では、正常な状態を基準として、新しいデータがそこからどれだけ離れているかを「MD値」という一つの指標で算出します。人間が判別しにくい複合的な変化を、通常状態からの「ズレ」として捉えることができます。

活用イメージ:設備の予兆保全
振動データなどをもとに、金型の割れ、旋盤チップの欠け、搬送装置の振動異常といった変化を捉えます。金型破損の予兆検知事例として、金型寿命が約40%向上した例もございます。
2. 「予測」で先回りする。ver4.0で強化されたT法
T法は、異常を見つけるための手法ではなく、条件と結果の関係をもとに推定・予測を行うための手法です。ver4.0では、このT法を活用したシミュレーション機能が大幅に強化されました。予測モデルの作成時には、予測に不要な項目の削除やパラメータの調整を自動で行い、より適した条件へ最適化することもできます。また、SignalCatcherではT法だけでなく、重回帰分析などの回帰手法も利用できます。同じデータを使って複数の手法による分析結果を比較できるため、対象や目的に合った予測モデルを検討しやすくなります。
事例1:電解研磨の条件検討
研磨量に対して「どの条件が大きく影響しているのか」をデータで確認できます。例えば、電圧、陰極面直径、液循環流量といった因子の寄与度を可視化することで、「どの条件を変えれば結果に影響しやすいか」をデータに基づいて検討しやすくなります。


事例2:3Dプリンターの「反り」を抑える条件検討
積層条件が複雑に絡む3Dプリントでは、ノズル温度やファン速度、インフィル密度など、多くの条件が品質に影響します。ここでは、「L18直交表」と呼ばれる、最小限の実験回数で最大限の情報を引き出すための手法(実験計画法)を活用します。
通常、あらゆる条件の組み合わせを試そうとすれば膨大な時間とコストがかかりますが、この表を用いることで、わずか18回の実験で効率的にデータを収集できます。
このデータをもとに、各条件(パラメーター)を変化させた際の結果の傾向を分析する「パラメトリックスタディー」をSignalCatcher上で行います。
「もし温度を5度上げたら、反りはどう変わるか?」といったシミュレーションを繰り返すことで、膨大な組み合わせの中から、反りを抑えるための有力な条件候補をスピーディーに探索できます。
3. 分析で終わらせない。現場のPLC・PCへの展開
SignalCatcherは、PC上での分析にとどまりません。導き出した関係式(予測モデル)を現場の制御システムへ展開することができます。
現場のシーケンサー(PLC)への展開
作成したT法関係式はExcel(xlsx)形式で出力でき、PLCやPCなど別の機器での推定に活用できます(※プレミアムplus版のみ)。これにより、稼働中の設備データを用いた品質推定や状態監視への応用が可能になります。
4. 【番外編】数値データがあれば「タコ釣り」も解析対象になる?
T法は「タコ釣りの釣果予測」にも活用できます。海水温、潮回り、場所、時間帯といったデータを入力し、その日の釣果を推定する試みです。


例えば「今日は1.29匹」といった推定値として出力されるため、条件と結果の関係を具体的に確認できます。数値化できるデータがあれば、製造現場に限らず、さまざまな対象をデータ解析のテーマとして扱える可能性があります。
5. 現場での使いやすさを追求したver4.0の改善点
SignalCatcher ver4.0では、実務での利便性を高めるため、UIや解析支援機能も進化しています。
- 視認性の高い新UI:画面を白ベースのデザインに刷新。工場のPC画面でも見やすく、操作しやすい画面構成になっています。
- GA(遺伝的アルゴリズム)による自動最適化:標本線の位置や重心算出区間など、解析条件の探索をソフト側が支援します。波形処理や特徴抽出に不慣れな方でも、妥当な解析モデルを構築しやすくするための機能です。
- T法モデル作成の自動最適化:予測への影響が小さい不要な項目の削除やパラメータの調整を自動で行えます。項目の選び直しや条件調整にかかる試行錯誤を減らし、より効率的に予測モデルを検討できます。
- 解析結果を共有しやすい:要因効果図などの解析結果をHTML出力でき、会議資料や技術報告書へ活用しやすくなります。
6. 終わりに:まずはExcelデータから試してみませんか
「熟練工のノウハウ」をデジタル資産に変え、それを現場の制御へとつなげていく。SignalCatcher ver4.0は、製造現場のデータ活用を具体的に進めるための有効なツールです。
まずは、手元にあるExcelデータを取り込むところから始めてみませんか?「いつもと違う」の早期発見や、製造条件の見直しに向けて、現場データを活かすきっかけになるはずです。
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